ハンコ社会

―仕事柄、伝票記入が多い―

 お客様からの入金などで、伝票や台帳記入をする。添乗にも出るような「現場野郎」でもあるくせに。
 実は、台帳や伝票の記入というのが好きではない。理由は簡単。数字が苦手だからである。例えば銀行入金があるとする。伝票上透明な現金に相殺し、その透明な現金をそれぞれに通行料や観光料に振り分け・・・あ〜んだよっ、それッ! 『ニコニコ現金で、菓子折り持って来んのが人情違いますかい!?』と言いたくなる。が、お察しの通り、そんな事しよったら、経営は成り立たない。(笑)

 話が逸れたが、やはり帳簿で必要不可欠なのが「ハンコ」である。
ハンコの権力の強さには恐れおののく。
 
 社判や実印と言うならまだ理解できる。しかし、シャチハタでまかり通る書類なのに
「あ、ここハンコないよ」とか言われると「カチン」とくる。『あってるから、構わねっぺよ〜!』と言う返事を、いつもしている。勿論、心の中で。
 請求書を送ったかと思えば、「社判が、名前のところに被ってないんですが…」とか、「所長印は無いのですか?」やら…もう、「はは〜ん、お客さん、面白い!嫌がらせでしょ?ん?言ってごらん?」と、受話器が拾う事のできない心の叫びがこだましてる。
 なぜ、そんなにも大事なのか?拇印を押せといわれるなら理解できる。個々に違うのだ。その人しかないのだから。ある意味、アナログではあるが、完璧なIDでもあるし。

 昔、銀行で預金の一時引き出し等をした時、登録した印鑑を忘れた。しかし職場にあった、そっくりなハンコでOKだったことがある。ダメ元で行ったのに、「お前らの目はビー玉か?ん〜?」と超音波で叫んだ。勿論、相手には聞き取れない。
 それ以来、信用ならなくなった部分があった。ある人はいう「ハンコ社会だから、しょうがねーよ」と。本当にそうだ。でも、裏を返せば「誰でもいいんだ。本人知らずともハンコさえあれば」である。クワバラクワバラ。

 とか何とか言ってる私も、一昔前は、「履歴書のハンコの押し方」を重視した面接なんてのをしてました…ってなオチ。しかし、アレは人とナリが現れると思う。