障害者のココロ・・・

自分のテリトリーではないが、私の会社は一般のお客様相手のバスツアーもある。
 ある日、食事から戻ると、お弁当組の人が「帰ってきた。聞いてみよう」と、私を待ってたかのように・・・
一枚のFAXを見せられた。「どうします?」とね。
 俗にいう、FAX送信紙(あて先や用件、送付元が雛になってるやつ)に手書きで書かれたのもだった。しかし、横書きで、何やら耳のマークが入っていた。
読んでみると、「御社のツアーに参加したいのですが・・・」と言う内容。更に読むと、「数年前に突然片方の耳が聞こえなくなり・・・」とある。
耳のマークは、「難聴障害者」である事を意味していた。よって、返信欄もFAX番号のみだった。
読んだあと、「どう思う?」と言われ、「え?何か問題でも?」と返した。当人は「御社がよければ・・・」と書いてるものの、確かに条件はあった。その条件で考えていたらしい。
私に聞いてみようというのは、その条件の事で、意見を聞きたかったらしい。その条件とは・・・
●「空いていれば、隣席は空けて欲しい。隣の方に気を使って欲しくないのです。隣の方も旅に来てるのに迷惑が・・・」と。
●「ガイドさんのマイクの声や、人の声が聞き取れない・・・」
●「お支払い方法はどうすれば・・・?」だった。
 しかし、予約状況を見ると、満席ではない。集合時間も当社では、卓球の試合などで使うようなパネルを前面窓に出すようにしてる。ただ、集金は、出発日が近いので振込みでは間に合わない。
直接支払いに来ていただくしかなかった。基本的に、ツアーでの訪問集金は行ってない。ここで、引っかかってたようだ。―「何なら、俺行きますよ」―で、「じゃあ、決定だね」という結論に。
 今日、集金に伺う旨の返信をし、行ってみた。住宅街に住んでいた。小奇麗なお宅であった。花壇とかあって、普通の暮らしぶり。呼び鈴を鳴らすと確かに2回目で出てきた。しかし、障害を持ってるとは思えない50代の主婦の方であった。
 私の名札をみて、「あ、昨日FAXくれた方ね?ありがとうございます。楽しみにしてますよ」と。どう見ても普通だ。代金を受け取り、領収証を渡すと「以前、とあるツアーに参加したら、隣の1人で参加した方
がいい方で、気を使ってくれたんですが、それが逆に罪悪感に変わってしまって・・・その人も旅が楽しみできてる筈なのにね〜(笑)」と明るく話してくれた。
で、「あなたの声も【音】でしか聞こえないけど、何とか口の動きとかで分るようにはなったのよ」と教えてくれた。なるほど、マイクを通しても聞こえないというのは、バス特有のあの縦長のマイクで口の動きが
見えなくなるから、なのであった。声量ではないのだ。
 しかし、今日の立ち話をしてた限り、ほとんど理解していた。口の動きだけで理解してるとは思えないほど・・・
 
 話は飛ぶが、以前の職場(某料理店)でも、障害者の方に手厚いサービスを・・・と思ったが、そっけなく「結構です」と言われたことがあり、それ以来バイトの子たちには「自然に振舞え。障害者という概念は捨てろ。」と教えていた。
凄く前向きで、普通の事が普通にできない、ならない、という状況なのに、明るく人生ってのを楽しんでるな。と帰りの車の中で考えさせられた。仮に自分がそうなった時に、この方のようになれるのかともね。
 引き返して、「やっぱりお金いらないっスよ(TдT)>」な〜んて泣きじゃくりながら返金しようとも思ったが、それこそ相手の方に失礼だ(笑)。
 ただ、この出来事で分ったのは、ただ優しくすればいいってもんじゃないんだな。ということ。